記事一覧 海運のナレッジ

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船底防汚システムとは?次世代は塗料ではなくカーペット⁉

日本マリタイムバンク営業部の阿部とヤニスです! 先日オランダのフィンスレート(Finsulate)社が次世代の船底防汚システムを開発し、日本市場への販売にも力を入れていくという事で、先日神奈川県川崎市の根本造船にて商品説明会およびデモンストレーションが行われました。次世代のものとはどのようなものかとても気になったので今回2人で参加してきました! デモンストレーションの様子 みなさん、船底防汚システムシステムとは何かご存じでしょうか? まずはそこからご説明していこうと思います! まず、どの船の底(船底)もきれいに塗料が塗られていますが、実はきれいに見せるだけではなく“ある重要な目的”のために塗料

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不況を知る②

今回の不況は世界を巻き込んだ海運の黒歴史、リーマンショックについてです。 リーマンショック(2008年9月) 2003年頃から2008年にかけて、海運は狂想曲さながらの熱気に満ちた期間でした。中国が世界の工場として本格的に存在感を持ち始め、日本を含む多くの製造業が中国に進出、その労働力として内陸部から沿岸部に民族大移動が起こっていた時代です。BRICSという言葉が誕生したのもこの頃で、新興国に大きな資本が流入した結果、不動産、資源、全ての価格が右肩上がりでした。 海運の運賃上昇も凄まじく、提示された運賃を1日でも保留・検討しようものなら、翌日にはもう同じ運賃で交渉するのが不可能な早さで運賃が高

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不況を知る①

船舶業界の歴史の中でも、海運不況について知る事は投資をする上で知っておいて損はありません。一体どんな不況があったのか、その時に何が起こったのか… プラザ合意(1985年9月) 1983〜1985年、世界最大の貿易黒字国となっていた日本は、諸外国から貿易不均衡の是正圧力を受けていました。為替は1ドル230〜250円台で概ね安定して推移してましたが、そのような中、ついに政府は外圧(特に米国)に負けます。1985年9月22日プラザ合意に至り、その翌日から突如として為替の暴落(円高)が始まります。プラザ合意前夜235円だったドルは、わずか6ヶ月間で170円(65円の円高)に!輸出企業にとっては大打撃で

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債権保全策(後編)

(前回からの続き) やはり本社からの情報は正しかったのだ。納入済みの舵3基分の合計価格は2,400万円。 未納1基分の価格は800万円。計3,200万円の関連債権であった。  ちなみに、私が納入を直前でストップさせたことは債権保全の教科書的行動として当時の上司のみならず本社の審査部からも大いに称賛されたものであった。 その後紆余曲折があったものの結局裁判所によって宇品造船の更生計画が承認され、小口債権は全額弁済、大口債権は70%切り捨て残りの30%を利息を付けて5年で弁済するというものであった。 従って、我々は納入済みの舵3基分に関しては価格の30%である720万円の回収ができ残りの1,680

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バウスラスターとは?

日本マリタイムバンク営業部の阿部です! 私、先日韓国の木浦(Mokpo)にて行われました船の修繕作業に立ち会ってきました!作業内容としましてはバウスラスターの解放整備がメインでしたが、みなさんバウスラスターとは何かご存じでしょうか? 今回は船の豆知識とあわせて説明していこうと思います! まず、木浦とは韓国の西南部に位置する港町で、1900年代前半には8千人以上の日本人が住んでいた街であり、旧市街地では日本統治時代の和風建築や近代建築が多数残っています。 漁師町という事で、新鮮な海鮮食品を売っているお店やシーフードレストランが数多くありました。 それでは早速ですが、船の今回訪れた船のご紹介です!

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債権保全策(前編)

債権保全策は商売上最も重要な施策の一つです。 これは今も昔も変わることはありません。 先日開かれたG7広島サミットの開催場所はその昔宇品造船所という老舗の中堅造船所があったところです。 当時その造船所に船舶のラダー(舵)を納めていました。 宇品造船所から注文を受け、それをIHI呉工場に下請け発注するという構図でした。 1977年11月のある土曜日(当時,土曜日の午前中はWorking Timeであった)朝一番に東京本社の審査部より“取扱注意“という注釈付きで「どうも宇品造船がやばいらしい」という情報が入った。 まず私が採った行動は、納入済みだが代金は未回収の舵に関する注文書/納品書等が全て 揃

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海運の環境問題

新聞、テレビなどで「環境問題」を耳にしない日はなく、我々海運人のみならず、海運への「投資家」にとっても大きな関心事でしょう。 そこで平易に、分かり易く海運が直面する環境問題を取り上げてみます。 先ずは、紙上報じられる「パリ協定」などはとも角として「地球温暖化」の原因となる環境負荷物質の1つのGHG(Greenhouse Gas)の「温室効果ガス」の削減で、海運も避けて通れません。 国際的な海運の環境への取り組みは、法的拘束力(条約)を持つ国連下部組織のIMO(国際海事機関)において2018年4月に採択された「GHG削減戦略」が基本です。そこで2050年を目標にGHG(実質CO2)排出量を200

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船舶保険会社のあるべき姿とは 船舶保険会社との対談企画!⑥

マリタイムバンク営業部の阿部です! 今まで船舶保険について色々と説明してきましたが、この対談記、今回が最終話となります。 それではどうぞ! 前回はこちら 阿部:色々と教えて頂きましてありがとうございました! 最後に御社のアピールポイントについて教えて頂きたいのですが、お願いしてもよろしいですか? 遠藤:ちょっと恥ずかしいですね(笑) 阿部:そこをなんとか! 遠藤:それでは語らせて頂きます!弊社の強みは、船会社様に対して事故や大きなトラブルを未然に防止するためのご提案ができることです。 昨年から始めた新たな取り組みとして、ノルウェーのSAYFR社と提携し、安全文化の醸成や船員教育に焦点を当てた提

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船にミサイルが撃ち込まれたら⁈ 船舶保険会社との対談企画!⑤

マリタイムバンク営業部の阿部です!今回も前回の対談記の続きで、戦争保険と不稼働損失戦争保険、オフハイヤー総合保険についてご説明していきます! 前回はこちら 海賊被害を補償する保険 遠藤:今までご紹介してきた船体保険、不稼働損失保険、船主責任保険(PI保険)は全て海上危険、要は通常起こりうるであろうリスクを補償するものでした。 しかしこれからご紹介する戦争保険は戦争危険、つまり船舶が何者かによって攻撃された場合のリスクを補償する保険となっております。 阿部:要するに船舶にミサイルが撃ち込まれたりした場合の船体損傷、積荷、船員の治療費や不稼働損失を補償してくれる保険という事ですか? 遠藤:その通り

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ニュースで見た座礁事故は保険で補償されている? 船舶保険会社との対談企画!④

マリタイムバンク営業部の阿部です! 今回も前回の対談記の続きで、船主責任保険についてご説明していきます! 前回はこちら 相手に掛けてしまった迷惑を補償する保険 遠藤:それでは船主責任保険についてご説明します。業界内では英語表記のProtection & Indemnityを略してPI保険と呼ばれることが多いです。ではこの保険で何が補償されるのかと言いますと、簡単に言えば事故を起こした際の本船の損傷、相手船の船体の損傷と積荷以外の賠償責任を補償しています。 阿部:非常にざっくりとしていますね。どのようなものがPI保険で補償される対象となるのでしょうか? 遠藤:例えば、船が入港した際に操船