世界最大の船の墓場に行ってみた!(インド出張記)
皆さんは突然ですが“船の最期ってどうなるんだろう?”と思ったことはないですか。
私たちが投資している船も、いつかは必ず、寿命を迎えます。
そして船は、様々な金属の集合体ですから、簡単に処分…というわけにはいきません。
この処分を専門的に行う場所を“スクラップヤード”と言い、世界各地に集積されています。
この記事では、インド出身である私、日本マリタイムバンクのパワンが、実際にインドにある世界最大級のスクラップヤードに取材を敢行。写真も含めて、簡潔に解説していきます。ぜひ皆さま、最後までご覧くださいませ~!
今年2回目のインド出張で、インドのグジャラート州バーヴナガル地区にある町、アランを訪れたときの記事です。 ここにはスクラップヤード(船の解体工場)があり、そのビーチは世界最大の”船の墓場”とみなされています。
アランの船舶スクラップヤード(解体場)は、海岸沿い 14 キロメートルに沿って183 の船舶解体場で構成され、合計 450 万軽貨排水量トン数 (LDT・船の重量を示す数値です) の処理能力を備えています。 そのうち 60 ヤード(約54.8メートル)が HKC(船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約 ) で、2023 年 12 月時点において 日本海事協会(Class NK)の認定を受けています。
アラン上空からの衛星写真
HKCって何?
HKC(船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約 )は、スクラップとして売却された船舶にはアスベスト、重金属、炭化水素、オゾン層破壊物質などの環境に有害な物質が含まれている可能性があることを前提に、船舶のリサイクルに関するすべての問題に対処することを定めた条約です。また、作業および環境に関する懸念の払拭や、世界中の船舶リサイクル拠点の整備などその規定内容は多岐にわたります。 下記はその主な規定内容です。
HKCにおいて規定されるグリーンシップリサイクルプロセス
- 必要な書類と受諾性を備えた商業契約
- 船舶固有リサイクル計画 IHM(危険物目録)の作成と検討
- 船舶の到着と法的な通関手続きおよび環境審査
- 陸揚げ許可と船舶リサイクル施設への船舶到着
- 船舶の除染を含む有害廃棄物の取り扱いと管理
- SSRP (船舶固有リサイクル計画) に基づく切断およびリサイクル作業
- 重機の取り出しと資材管理
- リサイクル完了
- 文書化と必要な報告
いかがでしょうか?細かい説明は省きますが、「リサイクルの推進と管理をきちんとやってくださいね!」というのが、HKCの目的です。船のスクラップは近年でこそ改善されてきていますが以前より様々な問題を引き起こしてきました。いつかそのことについてもお話しできたらと思います。
世界最大の船の墓場に行ってみた!
今回はインド最大級のNK(日本海事協会)認定HKC準拠グリーンシップリサイクルヤードとして現在稼働しているヤードを訪問することになりました。
最初に解体された船舶は、1982 年に建造された補給船で、海底構造物、石油生産プラットフォーム、沿岸の製油所の間に海底パイプラインを設置するというものです。
2番目に解体された船は、1977年に建設された石油プラットフォーム(石油掘削装置、海洋プラットフォーム、石油生産プラットフォームなどとも呼ばれています)で、岩層の中に眠る石油や天然ガスを抽出・処理するための設備を備えた大型構造物です。 多くの石油プラットフォームには作業員を収容するための設備も備えていますが、生産施設につながった宿泊施設があることが大きな特徴です。
船の解体方法としては、まずすべての金属製品や機器、ケーブル、家具などのリサイクル可能な物品を船外に搬出し、その後残留油をすべて除去します。
船の中身を取り出すと解体が始まります。 まずガス切断で大きく切り出し、その部分をクレーンで陸地まで運び、不浸透性の床材の上で細かく切断します(上の写真)。
船から解体されたものはすべて、洗浄後にバックヤードに保管され、さまざまな業界で再利用されるために販売されます(上の写真)。 さまざまな工場のバイヤーが毎日スクラップヤード(船舶解体場)を訪れ、必要な部品やスクラップを探したり、価格を比較するために多くのヤードを訪れたりします。 細かく切断された鉄は製鉄所に運ばれ、溶かされて再利用されます。 船舶から搬出された機械設備の多くは整備され、再び船舶に搭載されます。
世界の船舶解体場(スクラップヤード)の現状
アラン船舶解体場と同規模の大規模施設としては、他にアリアガ船舶解体場(トルコ)、チッタゴン船舶解体場(バングラデシュ)、ガダニ船舶解体場(パキスタン)などがあります。 1980 年代はガダニが世界最大の船舶解体場でした。 しかし、アランなどの新設ヤードとの競争により処理量が大幅に減少し、現在ガダニで生産されているスクラップの量は 1980 年代に生産されたスクラップの 5 分の 1 以下となっています。
ここまでブログを読んでいただきありがとうございます。次回またお会いしましょう…