海運のナレッジ

オフショア18号ファンドのAHTSという船のご紹介

マリタイムバンクは「オフショア18号ファンド」の募集を11月28日に予定しています。

オフショア18号ファンドのAHTSという船

このファンドはAHTS(Anchor Handling Tug Supply)という日本では、まだあまり知られていない船を投資対象にしています。そこでAHTSとは、どのような船なのか?その紹介と将来性について簡単にまとめてみることにしました。

AHTS(エイ・エイチ・ティー・エス)

業界人は「アンカーハンドラー」またはそのまま「AHTS(エイ・エイチ・ティー・エス)」と読んだりしますが、その名の通り「アンカー(錨)」を扱う能力に特化している船です。


沖合(オフショア)にある油田やガス田のプラットフォームや掘削設備にアンカーを設置・回収する重要な役割を果たします。


また、陸地から沖合まで必要な人員、資材、物資を輸送する役割もあります。ちなみに沖合にある油田やガス田の施設を支援するための船舶を総称して「オフショア支援船」と呼びます。

AHTSの特徴

AHTSの特徴としては、堅牢な構造と強力な推進力を有し、荒波にも耐えうる設計がなされている点です。初期のAHTSは比較的単純な機能を備えていましたが、時代と共に複雑かつ高度になってきました。

最新のAHTSは、優れた海洋耐性と操縦性を持ち、強力なエンジンと先進的な推進システムを搭載しています。搭載されているGPSと動力システムを連携させて、船を一定の位置や方向に維持させるダイナミックポジショニングシステム(DPシステム)という制御システムも搭載しています。

このDPシステムは、特にオフショア業界での掘削作業や構造物の設置、救助活動など、荒れ狂う洋上で船の位置を一定に保持しなければならない場面で重要な役割を果たしてくれます。

AHTSの建造ではノルウェー、オランダ、中国の造船所が世界をリードしています。特にノルウェーとオランダはオフショア支援船の建造に関しては世界的な評価を得ています。近年、環境基準の厳格化と運用コスト削減に応えるため、AHTSも燃料効率の良いエンジンや環境負荷の低いサステナビリティに重点を置いた方向に動いています。

そんなオフショア支援船ですが、銀行、特に日本の銀行はこの分野への融資に消極的です。その理由は様々ですが、

①前述の通りオフショア支援船は主に海外で建造されており、日本の造船所では作られていない。オフショア支援船に投資する日本の船主も、ほぼ存在しないので融資機会がそもそもない。

② 化石燃料産業を支援する船に融資する事が、銀行のイメージダウンにつながる。

③ リーマンショック後、オフショア産業が低迷した時期があり、多くの会社が倒産し不良債権が発生した。
といった理由があるようです。

確かに現代社会は「脱化石燃料」に向けて動いています。しかし石油は依然として世界の主要なエネルギー源の一つです。市場は徐々に縮小する事が予想されていますが、
それでも暫くは石油の需要が続くことが見込まれ、なくなる事はありません。

それにも関わらずこの数年(特に不良債権問題を理由に)十分な数のオフショア支援船は建造されてきませんでした。


この需給と供給のギャップは大変興味深いものです。マリタイムバンクは、投資家の皆様と「新たな資金の供給者」としてこの分野に注目していく第一歩を踏み出したいと思います。

↑こちらは18号ファンドの船が、オイルリグを引っ張ってる画像です。

執筆者:代表 昼田将司