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海運のナレッジ

債権保全策(前編)

債権保全策は商売上最も重要な施策の一つです。 これは今も昔も変わることはありません。 先日開かれたG7広島サミットの開催場所はその昔宇品造船所という老舗の中堅造船所があったところです。 当時その造船所に船舶のラダー(舵)を納めていました。 宇品造船所から注文を受け、それをIHI呉工場に下請け発注するという構図でした。 1977年11月のある土曜日(当時,土曜日の午前中はWorking Timeであった)朝一番に東京本社の審査部より“取扱注意“という注釈付きで「どうも宇品造船がやばいらしい」という情報が入った。 まず私が採った行動は、納入済みだが代金は未回収の舵に関する注文書/納品書等が全て 揃

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海運の環境問題

新聞、テレビなどで「環境問題」を耳にしない日はなく、我々海運人のみならず、海運への「投資家」にとっても大きな関心事でしょう。 そこで平易に、分かり易く海運が直面する環境問題を取り上げてみます。 先ずは、紙上報じられる「パリ協定」などはとも角として「地球温暖化」の原因となる環境負荷物質の1つのGHG(Greenhouse Gas)の「温室効果ガス」の削減で、海運も避けて通れません。 国際的な海運の環境への取り組みは、法的拘束力(条約)を持つ国連下部組織のIMO(国際海事機関)において2018年4月に採択された「GHG削減戦略」が基本です。そこで2050年を目標にGHG(実質CO2)排出量を200

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船舶保険会社のあるべき姿とは 船舶保険会社との対談企画!⑥

マリタイムバンク営業部の阿部です! 今まで船舶保険について色々と説明してきましたが、この対談記、今回が最終話となります。 それではどうぞ! 前回はこちら 阿部:色々と教えて頂きましてありがとうございました! 最後に御社のアピールポイントについて教えて頂きたいのですが、お願いしてもよろしいですか? 遠藤:ちょっと恥ずかしいですね(笑) 阿部:そこをなんとか! 遠藤:それでは語らせて頂きます!弊社の強みは、船会社様に対して事故や大きなトラブルを未然に防止するためのご提案ができることです。 昨年から始めた新たな取り組みとして、ノルウェーのSAYFR社と提携し、安全文化の醸成や船員教育に焦点を当てた提

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船にミサイルが撃ち込まれたら⁈ 船舶保険会社との対談企画!⑤

マリタイムバンク営業部の阿部です!今回も前回の対談記の続きで、戦争保険と不稼働損失戦争保険、オフハイヤー総合保険についてご説明していきます! 前回はこちら 海賊被害を補償する保険 遠藤:今までご紹介してきた船体保険、不稼働損失保険、船主責任保険(PI保険)は全て海上危険、要は通常起こりうるであろうリスクを補償するものでした。 しかしこれからご紹介する戦争保険は戦争危険、つまり船舶が何者かによって攻撃された場合のリスクを補償する保険となっております。 阿部:要するに船舶にミサイルが撃ち込まれたりした場合の船体損傷、積荷、船員の治療費や不稼働損失を補償してくれる保険という事ですか? 遠藤:その通り

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ニュースで見た座礁事故は保険で補償されている? 船舶保険会社との対談企画!④

マリタイムバンク営業部の阿部です! 今回も前回の対談記の続きで、船主責任保険についてご説明していきます! 前回はこちら 相手に掛けてしまった迷惑を補償する保険 遠藤:それでは船主責任保険についてご説明します。業界内では英語表記のProtection & Indemnityを略してPI保険と呼ばれることが多いです。ではこの保険で何が補償されるのかと言いますと、簡単に言えば事故を起こした際の本船の損傷、相手船の船体の損傷と積荷以外の賠償責任を補償しています。 阿部:非常にざっくりとしていますね。どのようなものがPI保険で補償される対象となるのでしょうか? 遠藤:例えば、船が入港した際に操船

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船が沈没したらどうなるの? 船舶保険会社との対談企画!③

マリタイムバンク営業部の阿部です! 今回も前回の対談記の続きで、船体保険と不稼働損失保険についてご説明していきます。ここから少々内容が難しくなるかもしれませんが、非常に大事なところですのでご一読頂けますようお願いします! 前回はこちら 船の損傷を補償する保険 阿部:それでは船体保険からご説明お願いします! 遠藤:わかりました。船体保険とは主に船体の損傷や機器類の故障が起こった時の修繕費を補償するものです。以下の通り、簡単に表にしてみました。 阿部:へぇ~、予防にかかる費用も保険で補償されるんですね。 遠藤:そうです。ただし保険契約上、免責金額がありますからそれを超えた分を保険会社が負担します。

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船のリスクとは? 船舶保険会社との対談企画!②

マリタイムバンク営業部の阿部です!今回は前回の対談記の続きで、船舶保険の種類について簡単にご説明していきます! 前回はこちら 船舶保険の種類 阿部:船舶保険の歴史についてよく理解できました!それでは現代の船舶保険についてご説明頂きたく! 遠藤:わかりました。ところで阿部さんは自家用車を持たれているとお聞きしましたが、自動車保険には加入されていますか? 阿部:もちろんです!そもそも自賠責保険は法律上必ず入らないといけませんし、任意保険のも入る方が多いですよね? 遠藤:おっしゃる通りです。実は船もそうで、扱っている金額がとても大きいため、万が一の大きな事故が起こった場合、会社の経営に影響するほどの

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船舶保険は冒険から生まれた? 船舶保険会社との対談企画!➀

マリタイムバンク営業部の阿部です!最近弊社のSNSアカウントへ「船は沈む可能性があるからリスクが高い」「海賊に襲われるからリスクが高い」といったコメントが多くきております。 確かに私も船の仕事を始める前までは同じことを思っておりました。しかし、船も自動車や不動産と同じように“保険”が存在し、万が一の事故が起きた場合でも保険会社がサポートしてくれる仕組みとなっております。 そんなこと言われても、仕組みがわからなければいまいちピンときませんよね? そこで、一般の方々が船舶保険の仕組みをわかりやすくご理解頂くために、今回は船舶保険のプロである「三井住友海上火災保険株式会社」の営業マン、遠藤雅也(えん

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「投資」と「シッピングサイクル」

今日は、船舶の収益面でのお話です。 「船舶投資」と聞いても海運業界の方でなければピンと来ないはずです。少し専門的にはなりますが、これを読んで少しでも「そうだったのか!」と思っていただけると幸いです。 「船舶」は運ぶだけ? 海運業は、文字面からは船舶という手段で物資や人客を大量輸送する「用役」を提供するサービス産業ですが、収益面から見ると船舶を第三者に貸与するなり、船舶そのものの売買で収益を上げることも含まれ、「投資」という観点から見ることも必要です。 船舶は経済的価値から見ると、新造船を建造するにしても、中古船を購入するにしても比較的大きな金額を必要とし、「金食い虫」といえます。船舶は法律上「

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マリタイムバンクSNS『海運ニュース』から読み解く中国の南シナ海問題

マリタイムバンク営業部です。 海運の視点から日々のニュースを追っていると、中国による海洋進出の動きが一際目につきます。 今回は、普段マリタイムバンクのSNSを担当している私が、SNSに掲載した海運ニュース記事を振り返り、なぜ中国がこれほど強引に海洋進出を進めるかについて、南シナ海に焦点を当てて読み解いていきたいと思います。この記事を読見終わった時には、中国とアメリカの海洋覇権争いが身近に感じられると思います。 【2023.3.16 – SNS記事より】 日本とシンガポール、台湾、香港などを結ぶ海底ケーブルプロジェクトが、中国の反対と許認可問題のため計画より1年以上遅れています。海底ケーブルの許