船舶投資のイロハ

【昼田ブログ13】なぜ海運市況は激しく動くのか?「FFA」とバルティック・インデックスの不思議な関係(後半)

日本マリタイムバンク代表取締役の昼田です。

前回は、海運業界ではおなじみの「バルティック・インデックス」を株価やFXと同じように考えて、ディープラーニングで将来の海運市況を予測しようとしたものの、うまくいかなかった話で、結局また脱線気味に進めてしまいました(笑)。

なぜ海運市況は激しく動くのか?「FFA」とバルティック・インデックスの不思議な関係(前半)

私は今では、「バルティック・インデックスは、需要と供給半分、株価・FX的な動き半分の指標」と考えるようになっています。

つまり、これだけ失敗してもなお、このインデックスの動きが需要と供給だけですべて説明できるものではない、と信じています(笑)。

前回も登場したバルティック・インデックスの長期チャートです。

皆さん、何か気づきませんか?

2005年くらいまでの動きと、それ以降の動きに、少し変化があるように見えないでしょうか。私には、2005年以降の方が値動きが激しくなっているように見えます。

もちろん、これには中国経済の急成長をはじめ、さまざまな要因があります。ただ、私が個人的に面白いと思っていることがあります。

YouTubeの「【SGX独占対談】船会社・荷主が知っておきたいFFA」でも少し触れましたが、1990年代に始まった運賃先物取引「FFA」に、中央清算機関を利用した取引が本格的に登場してきたのもちょうどこの頃なのです。

もともと船と貨物の実需を表す「運賃」が、FFAの登場によって、金融市場でも売買されるようになった。

私は、このこと自体がとても面白いと思っています。

「運賃を売買する」ってどういうこと?

実を言うと、日本の船主や金融機関の方々と話していても、運賃先物取引の仕組みまで理解している人はそれほど多くありません。海運のプロですらそうなのですから、普段海運に関わっていない方が「運賃を売買するって、どういうこと?」となるのは当然だと思います。

なぜ分かりにくいのか。私は、「運賃」というものが、そもそも普段売買されるものではないからだと思っています。

例えば、原油やお米であれば、それ自体が商品として日々売買されています。ですから、「将来の原油価格を今のうちに決めて取引する」と言われても、何となくイメージはできると思います。

ところが、運賃は違います。

運賃は、船で貨物を運んでもらうために支払う料金です。普段の世界で「運賃だけを買って、別の人に売る」なんてことはありません。

だから私は、FFAを理解するときには、いったん「売買」という言葉を忘れてしまった方が分かりやすいと思っています。

実社会では、荷物を運んでもらうために運賃を支払う人がいます。もう一方には、荷物を運んであげて運賃を受け取る人がいます。

これをFFAの世界に置き換えると、運賃を支払って荷物を運んでもらう荷主が「運賃のBuyer」、運賃を受け取って荷物を輸送する船会社が「運賃のSeller」です。

こうすると、少しはイメージ湧きませんか?

「実需の世界」と「架空の世界」をつなぐバルティック・インデックス

さらに面白いのは、FFAの参加者が船会社や荷主だけではないことです。実際には、船も持っていなければ、運ぶ荷物も持っていないファンドや投資銀行などの金融プレイヤーも参加しています。

つまり、実際の船も貨物も動かない「架空の輸送取引」が行われているわけです。もちろん、ここでいう「架空」とは怪しい取引という意味ではなく、実際の船や貨物を伴わない金融取引という意味です。

しかも、SGXからいただいた資料によると、その取引量は実際に海上輸送されている物量に匹敵する規模にまでなっています。

言い換えれば、実際に船と貨物が動いている「実需の世界」の横に、それと同じくらいの規模を持つ「架空の運賃市場」が存在していることになります。

しかも多くの取引参加者が存在することで流動性が生まれ、実需では説明しにくい値動きを形成しています。

そして、この二つの世界をつないでいるものがバルティック・インデックスです。

つまり、

「実需の海運市場 → バルティック・インデックス ← FFA市場」

という形で、「実需の世界」と「架空の世界」が同じ指標を通じてつながっているわけです。

2005年頃からFFAの中央清算が始まり、その後のバルティック・インデックスが激しい値動きになったことを、私は関連付けて見ています。

今の私は「どうしてFFA市場が実物の海運市場に影響を与えているのか」を明確には説明できる答えを持っていません。しかし、この大きな二つの市場が、同じ「バルティック・インデックス」という物差しでつながっている以上、互いに何らかの影響を与えていると信じています。

だからこそ私は今でも、バルティック・インデックスを「需要と供給半分、株価・FX的な動き半分」の指標として見ているのです。


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