海運のナレッジ

ニュースで見た座礁事故は保険で補償されている? 船舶保険会社との対談企画!④

マリタイムバンク営業部の阿部です!

今回も前回の対談記の続きで、船主責任保険についてご説明していきます!

前回はこちら

相手に掛けてしまった迷惑を補償する保険

遠藤:それでは船主責任保険についてご説明します。業界内では英語表記のProtection & Indemnityを略してPI保険と呼ばれることが多いです。ではこの保険で何が補償されるのかと言いますと、簡単に言えば事故を起こした際の本船の損傷、相手船の船体の損傷と積荷以外の賠償責任を補償しています。

阿部:非常にざっくりとしていますね。どのようなものがPI保険で補償される対象となるのでしょうか?

遠藤:例えば、船が入港した際に操船ミスをして岸壁にぶつかり、船と岸壁に損傷が生じたとします。その際に本船の損傷を補償するのは船体保険ですが、岸壁の損傷を補償するのがこのPI保険となります。他には船員が乗船中にけがをしてしまった際の病院代などもPI保険の対象ですね。

阿部:同じ事故でも補償してくれる保険の種類は違うんですね!

遠藤:その通りです。具体例をあげますと、とある国の沖合で船舶が座礁事故を起こした場合、船から燃料が流出する可能性がありますよね?その際の被害国に対する損害賠償や燃料の撤去作業にかかった費用はPI保険で補償されます。国によっても異なるのですが、船主は法律によって賠償金額が制限されます。一方、船外撤去費用等は制限がかからないため、膨大な金額が必要になることもあります。従って、保険会社によっても異なりますが保険の付保額は数百億や上限金額を設けないケースもあります。

阿部:なるほど、座礁事故などの損害額はすごい金額になりそうですね…。でも金額の上限が無いという事は船会社にとっては良い事ですが、そんな大きい金額を補償してもらうためには莫大な保険料を船会社は保険会社に支払わなければいけなくなりそうな…。あと保険会社が倒産しちゃったりしませんか?

遠藤:良いご質問です!この様な非常に大きなトラブルが起きた際に船会社を守るのが我々の役目ですが、そもそも保険会社が倒産してしまっては元も子もないです。このような事態を防ぐために、PI保険は保険会社と一船会社の1:1の関係性ではなく、その保険会社に加入している船会社全体で助け合おうという考え方となっています。

要するに、大きな事故が起こった場合、他の船会社が支払っている保険料も使われるので、船会社が定期的にお支払いしている保険料が高すぎたりすることはないです。また、一保険会社だけでは補償しきれない金額となった場合、世界中の保険会社がお金を出し合って補償するという国際ルールがありますので、保険会社が倒産してしまうといったリスクはほぼありません。

阿部:保険会社同士でもそのような仕組みがきちんと構築されているんですね!

遠藤:そういうことです!

それでは次回は戦争保険とオフハイヤー総合保険についてご説明していきます。お楽しみに!

執筆者:営業部 阿部廣