船舶チャータリングガイド|定期傭船、航海傭船、トリップ定期傭船の違いを解説
マリタイムバンク営業部の大竹です。
今回は、船舶業界に関わる皆様にとって重要な「チャータリング」について、私の経験を踏まえて解説する第2弾です。
チャータリングとは、簡単に言うと、船を借りてくる、あるいは船を貸して利鞘を稼ぐ仕事です。具体的には、ブローカーを通じて、船を実際にレンタルし使用します。
チャータリングには主に4つのタイプがあります。
- 裸傭船: 船そのものを借りる
- 定期傭船: 期間で船を借りる
- トリップ定期傭船: 特定の航海期間で船を借りる
- 航海傭船: 船を使って実際に荷物を運ぶ
不定期船(ドライバルクやタンカーなど)の運航会社(オペレーター)は、これらのチャータリングタイプを状況に応じて使い分けています。
今回は、定期傭船、航海傭船、トリップ定期傭船について詳しく解説していきます。
定期傭船
定期傭船は、期間で船を賃借する契約です。期間は短ければ5~6か月、長ければ10年、LNG船などでは30年を超えることもあります。5か月未満の場合は、通常トリップ定期傭船となります。
ドライバルク業界では、船主は長期(3~7年)で船を借り入れて、有利な条件で貸し出すことを目標にチャータリングを行っています。長期傭船で船を持つ場合、オペレーターは自分で貨物を引く(航海傭船)か、有利な条件で船を借りてくれる別の船会社を探します(トリップ定期傭船)。
定期傭船は、1日あたりのレンタル料で船の貸し借りが行われます。傭船料は、バルティック海運集会所の指数や先物を参考に、船のスペックや傭船者の与信などを考慮して交渉で決定されます。
航海傭船
航海傭船は、船を使って実際に荷物を運ぶ契約です。船会社は運んだ貨物の数量に応じて運賃を得ます。運賃は、XX USD / MT(トンあたり何ドル)という単位で計算されます。
例えば、50,000MT(メトリックトン)のトウモロコシを北米ミシシッピ川からパナマ運河を経由して日本の名古屋港へ輸送する場合、50/MT(FIOST前提)で契約したとします。すると、船会社は50,000x50/MT(FIOST前提)で契約したとします。すると、船会社は50,000x50 = 250万ドルの収益を得ます。
船会社は、この収益から、船のレンタル料、バンカー燃油費用、パナマ運河の通狭料、港費用、その他費用(Over Age Premiumや危険地域配船保険料、CVEなど)を支払います。予算内に収まれば船会社の収益となり、予算オーバーすれば損失が発生します。航海傭船は、実際の航海開始の1~3か月前に決定されることが多く、オペレーターは1~3カ月先の船のレンタル料を予想して運賃を計算します。
航海傭船は、定期傭船(特にTCT)と比較して、滞船料や早出し料などの概念がある点が特徴です。航海傭船者は、船の荷役時間制限があり、遅延した場合、その分の補償(違約金)を船主に支払う必要があります(滞船料)。逆に、想定時間より早く荷役が完了すれば、船主は傭船者に報奨金を支払います(早出し料)。荷役可能な時間をレイタイムと呼びます。
トリップ定期傭船(TCT)
トリップ定期傭船は、定期傭船と航海傭船の中間の契約形態です。A地点からB地点まで荷物を運ぶ航海の期間のみ、船を時間単位で借りる方法です。
多くのドライバルクの海運会社は、このトリップ定期傭船を利用しており、航海傭船よりも成約数は圧倒的に多いです。これは、荷主が航海傭船の代わりにトリップ定期傭船で市場から船舶を調達したり、荷主自身も船を所有し、貨物を市場に出す前に内部で輸送する場合があるためです。
私の前職では、大手オペレーターに勤務していましたが、7~8割がトリップ定期傭船で船を貸し出すケースでした。
トリップ定期傭船の相場は、主にバルティック海運集会所が発表する航路が決定的なベンチマークとなっています。
例えば、50,000MT(メトリックトン)のトウモロコシを北米ミシシッピ川からパナマ運河を経由して日本の名古屋港へ輸送する航路は、バルティック海運集会所のS1C - US Gulf trip to China-south Japanに該当するルートで、一日あたりの傭船料はこの指標を参考にすればいいでしょう。
このように、船舶業界には様々なチャータリングの形態が存在し、それぞれの特徴やメリット・デメリットがあります。