海運のナレッジ

船をリサイクル?!シップリサイクルの取り組みとやり方

本マリタイムバンク営業部の阿部です!

遅くなりましたが、2023年明けましておめでとうございます。今年も色々な場所へ行き、読者の方々に興味を持ってもらえるような記事をたくさん書いていこうと思っておりますので、引き続き宜しくお願いします!

さて、今回はインド出張記第2弾アラン編を今回は書かせて頂きます。

前回ムンバイ編はこちら

船は資源の宝庫?!リサイクルされている!

いきなりですが、船もリサイクルされているということはご存じでしょうか?今の船の寿命は船の種類やメンテナンス状況にもよりますが、おおよそ20年~30年となっております。寿命が来た船は海に沈められているわけではございません!

船としての役割は果たせなくても、船は鉄の塊であって、船内には多くの機器や家具、その他使用できるものがたくさんあります。

船は資源の宝庫なんです!これらを再利用するために、船を解体する造船所や船内の再利用できるものを綺麗にして販売している業者(リサイクルショップと同じ!)が世界中にはたくさんいます。

シップリサイクルの町、アラン

私はこの船のリサイクルで世界的に有名な町であるインドのアラン(Alang)という場所にある船を解体する造船所(一般的にスクラップヤードと呼ばれます)に行ってきました!

まずはアランのご説明からさせて頂きます。今回はムンバイから飛行機で1時間ちょっと北上したところに位置するアハメダバード(Ahmedabad)という都市へ行き、車で約5時間南下した町、バハブネガー(Bhavnagar)に滞在しました。アランはバハブネガーから約50kmさらに南下した場所に位置しています。

アランには約150社におよぶスクラップヤードやその他解体業者、船具メインのリサイクルショップ、製鉄所等といった非常に多くの船の解体業関係者が存在します。まさしく船のリサイクルで経済が成り立っている町なのです!なお、その多くの労働者はバハブネガーに住んでいるようです。

そのため町の雇用状況も非常に安定しているので、アランやバハブネガーはインドでは驚くほどに治安が良い町となっております。ちなみにこの町の約95%以上はベジタリアン(宗教上の理由で肉や魚を食べない人)のようで、ホテルやレストランでも肉や魚はもちろん、アルコール類ですら一切ありませんでした…

アランの場所。ムンバイから直線距離約350km離れた北北西に位置しています。

いざ、船のリサイクル現場へ!

れではインドのスクラップヤードをご紹介します!

ちょうど解体していた船が載貨重量約15万トンで全長300m以上、幅約48mのスエズマックスの船でした!大きいですね~

(スエズマックス:スエズ運河を通航出来る最大の船。)

船の解体方法としましては、初めに機器やケーブル、家具などの金属製品や再利用できるものを全て船外へ運び、その後残油を全て抜き取ります。ちなみにこれらはそれぞれの専門の業者が引き取り全て再利用されます。

船内が空っぽになったら解体作業のスタートです。まずはガス切断で大きく切り取り、その部分がクレーンで陸上へ運ばれ、その後陸上で細かく切断されます。

作業効率を上げるためにある程度切断した後、満潮のタイミングに合わせてウインチで船を陸上側へ引っ張り、また切断といった感じで同じ作業が繰り返されます。

このような方法を「ビーチング(Beaching)」と呼びます。細かく切断された鉄は製鉄所へ運ばれ、溶かして再利用されるといった流れです。

こちら日本マリタイムバンクの親会社にあたります株式会社オーシャントラストのHP上にアップされている船の解体方法を説明している動画です。とてもわかりやすいので、是非ご覧になって下さい!

動画はこちら

さて、これらの解体された鉄がどのように生まれ変わっているのか気になりますよね?実は周辺の製鉄所にも行ってきましたので簡単にご紹介します!

鉄のリサイクル現場も!

比較的大きくて厚い鉄板はこのように丸く切られて…

フランジになりました!

(フランジ:部材の端部を他の部材などに接合するための部品。)

小さな鉄は溶かしてこのような形にします。これを「ビレット」と呼びます。このまま売られるものもありますが、加工して売られるものもあります。例えば…

ビレットを薄く伸ばして、このようなフラットバーに加工しています。

ビレットをさらに薄く伸ばして棒状に加工しています。これはTMT Bar(Thermo-Mechanical Treated Bar)と呼ばれ、鉄筋としても知られるコンクリートを強化するために使用される部材です。建設現場等で見たことがある方も多いのでは?

これは銅を溶かして角材や円柱状に固めたもので「インゴット」と呼ばれます。これは加工されずこのまま売られるそうです。

持続可能な社会のために

いかがでしたでしょうか?価値を見出せなければただのゴミにしかならないものが生まれ変わる姿を実際に現場で見て私はとても感動しました。地球上にある限られた資源をどのように使うのか、今後人類がもっと考えていかなければいけない問題だと思います。

日本マリタイムバンクはこのような船のリサイクルビジネスに関しても融資を行っております。人類の何十年後、何百年後の明るい未来のために、今我々に何ができるかという事を常に考え、そのようなビジネスの手助けができる銀行でありたいと思っております。

おまけ

最後に余談ですが、「パーン」と呼ばれるインドの伝統的な食べ物をご紹介します!

よくわからない葉っぱの上に薬草?香辛料?をのせて巻いて…

これを1口でパクっと。これがパーンです。

インドでは有名な食後に食べる嗜好品のようですが…これがまた何とも言えない味でした(泣)

毎晩これを食べるはめになりましたが、面白ことに時間が経つにつれておいしいと感じ始めるのです。確かにビールやたばこも初めはおいしいと感じない方が多いですが、時間が経つにつれてやめられなくなりますね。嗜好品とはそんなものなの知れませんね。

それでは次回もお楽しみに!

執筆者:営業部 阿部廣