船のブローカーって何?どういうお仕事?お給料事情は?
マリタイムバンク代表の昼田です。
今日は、 船の“ブローカー”という仕事について書いてみたいと思います。
ブローカーってなにする仕事?
船のブローカーは一言で説明すると、「街でよく見かける不動産仲介の船バージョン」です。3LDKの戸建て物件3000万円とか、ワンルーム家賃6万円とかのチラシを店の窓に貼っているアレですね。

船のブローカーは、船を購入したい船主さんに売船を紹介したり、船会社に傭船(レンタル)できる船を紹介したりする仕事で、「マッチングアプリでもできたらこんな仕事消滅するのでは?」と思わず思ってしまう業務です。
シンガポールでのブローカー生活、スタート!初めての仕事は…?!
私が28歳の時、それまで勤めていた日本の会社を辞めてシンガポールのブローカー会社に入りました。ブローカーになりたい!とか、海運業界で働きたい!とか、シンガポールで働きたい!といった崇高な動機はゼロで、単に海外で働きたかっただけです。海外で働くと言ってもどうやって職を探していいか分からず、なんとなく父親の口利きで入れた会社が、たまたまシンガポールのその会社だったという完全に世間を舐めた転職です(ちなみに本当はアメリカに行きたかったです)。
まずは「実習生(Trainee)」という名の6ヶ月有期雇用で、提示された給料は「完全お試しプライス」。前の会社の半分くらいでしたが正直「まあ、シンガポールではこのくらいの給料でもなんとかなるだろう」と思っていました。
振り返るとどこまで世間を舐めていたことやら…。
扱う船の種類や紹介内容によって仕事は細分化されていて、私が入った会社はコンテナ船専門のブローカーでした。
主に傭船(レンタル)を中心に、ちょこちょこと売買船もやる感じでした。一人で初めて決めた案件は今でも忘れません。ドイツ船主が所有する1800個積みのコンテナ船を、香港の船会社に2年傭船(レンタル)を仲介した案件です。確か傭船料が1日あたり$18,000 で、仲介手数料はその1.25%。これは業界標準です。
$18,000 x 2年 x 1.25% = $164,250約2000万円の収益が電話一本でできてしまうという、結構オイシイ仕事と言えるかもしれません。
ちなみに売買船の時の仲介手数料は船価の1%が業界標準です。30億円の船を仲介すれば3000万円、10億円の船を仲介すれば1000万円といった具合です。
そんなブローカーの給料は?
そんな、金額の大きい仕事のお給料事情は気になりますよね!このコラムのためにわざわざシンガポールの大手ブローカーで働く友達に給料事情を聞いておきました(笑)
初任給は$3500 (2022年12月現在の為替で35万円)、13ヶ月分はもらえるはずなので年収で455万円といったところでしょうか。
気になるボーナスは完全出来高制です。
まず、仲介して得られた仲介手数料から自分の給料と直接経費(出張代とか携帯代)を引く。 そうすると「一年間のお仕事の利益」が金額として出てきます。その金額を会社と分配するのですが、分配比率は累進課税制度で、
利益が少額だとブローカー20%、会社80%という分配比率、利益が1億円以上だとブローカー50%、会社50%と言った配分になるようです。
できる人はボーナス5000万円以上稼げます!
ただ、日本のブローカーは、より会社勤め的給料体系になっていると思います。結果、外国だと稼げるブローカーも会社に残りますが、日本の場合、稼げるブローカーはより良い条件の会社に移ったり、独立したりしてしまうようです。
ちなみに私はブローカーに向いていないようで、夢のようなボーナスはついに一度も貰えないまま、3年後には船舶金融・ファンドの会社に移ってしまいました。
そして現在も、こうして『マリタイムバンク』で船舶金融・ファンドの仕事をしております。
執筆者:代表 昼田将司