先週の海運ニュースPICK UP
先週マリタイムバンクのSNSで配信したハンブルク港の記事が気になったのでピックアップしてみたいと思います。
【10月25日の海運ニュース】
ドイツのハンブルグ港を運営するターミナル会社の35%の株式取得に向けた入札に中国の船会社が参加しましたが、欧州委員会はドイツ政府に対して中国企業の株式取得を承認しないよう警告したとのことです。ドイツは中国と経済的に緊密でハンブルク港における最大の貿易パートナーです。一方、中国は一帯一路政策を通じた広域経済圏の拡大を進めていますが、欧州委員会はドイツの主要港に中国資本が入ることを危惧しています。
【10月27日の海運ニュース】
ドイツ政府は中国企業によるフランクフルト港のターミナル会社の24.9%取得を認めました。天然ガス供給でロシア依存した経験から重要インフラに外国資本が入ることへの抵抗感は強く反対の声が大きかったものの、元ハンブルグ市長でもあるショルツ首相の後押しを受け、出資が決まりました。なお、ショルツ首相は来週に訪中を予定しています。
グローバル社会の発展に伴い、国際貿易の最適化を追求してきた世界が今、「安全保障」と「自国経済」の間で揺れ動いている様で、 このニュースはまさにその象徴なのかもしれません。
海運業界では良く知られていることですが、ギリシャ最大の港であるピレウス港やスリランカのホンバントタ港は既に中国資本傘下になっています。今年8月、ホンバントタ港に停泊していた中国の「調査船」が実は「スパイ船」ではないか?といった騒ぎがあったのも記憶に新しいです。
実際どれくらいの港湾に中国資本が入っているのか調査しみましたが、ヨーロッパだけでもフランス、スペイン、イタリア、ベルギー、オランダと思った以上に多くの港に中国資本が進出している事がわかりました。
身近な所では南沙諸島の海洋進出がよくニュースで取り上げられるので、ご承知の人も多いかもしれませんが、太平洋のマーシャル諸島も火種を抱えています。
関連する過去のマリタイムバンクのSNSニュース
(長い記事は抜粋しています)
【9月1日の海運ニュース】
アメリカ沿岸警備船「カーター」がソロモン諸島沖へ停泊・給油の許可申請をしましたが、ソロモン諸島側がこれに応じなかったとアメリカが声明を発表。ソロモン諸島は停泊許可を下す前に本船が出航したと主張が食い違っています。
4月にソロモン諸島は中国政府との間で安全保障協定を締結されると発表がありました。さらに8月には中国から6600万ドル(約90億円)の融資を受けアメリカが安全保障上禁止しているファーウェイ製の携帯基地局を設置することを発表しました。
相次ぐ中国との蜜月のニュースに米国・豪州を中心に緊張が走ってる中での今回入港にかかるニュース。
【7月13日の海運ニュース】
スリランカは近代社会でも稀に見る経済危機に陥っています。外貨は完全に底をつき海外から燃料を買えず、車は動けなくなり学校も停電で休学、物価インフレ率は50%を超え、国は完全な破産状態です。当然外国からの借金返済もできなくなっています。
中国資本との共同事業として2010年に開発が始まったホンバントタ港(Hambantota International Port)は、2017年には返済困難になり、中国が港湾を99年間独占的に使用できる契約に更改されました。いわゆる「中国の債務のワナ」と呼ばれる現象です。
執筆者:代表 昼田将司