船にも鑑定士がいる?プロに取材してみました!
マリタイムバンクの募集ページでも出てくる「船価鑑定」。
いったい誰がどうやって船価鑑定しているの?そもそも鑑定額って信頼できるの?
そんな疑問を、※1船舶鑑定会社「VesselsValue(ベッセルズ・バリュー)」の阿部さんにぶつけてみました!
VesselsValue 阿部さん
(マリタイムバンク昼田「以下(昼)」)
「VesselsValue」は日本語で「船の価値」というダイレクトな名前なイギリスの船舶鑑定会社です。
阿部さんも日本人でありながらロンドンで活躍されていますね。VesselsValueについて、もう少しご説明いただけますか?
(VesselsValue阿部さん「以下(阿)」)
はい、VesselsValueは2011年に、当時、船舶ブローカーだったリチャード・リブリンによって設立されました。
それまで船価鑑定というのは、船の売買仲介をする船舶ブローカーが、売買事例や経験を元に鑑定していたものを
リチャードは、売買事例のビッグデータをもとにコンピューターアルゴリズムをつかって算出しようと立ち上げた会社です。
なので2008年にこの構想をもった彼は、まず数学者を探す事から始めてます。
(昼)
面白いですね。不動産だと「3LDKの売買事例」といっても、東京にあるか北海道にあるかで全然違うし、木造か鉄筋か、南向きか北向きかでも変わってきますが
船の場合だと、どこで建造されたかや、売買の場所など関係なく大体同じような値段になるので、売買事例のビッグデータをつかって十分に信頼性のある鑑定が算出できますよね。
でも、いままで船舶ブローカーが出していた船舶鑑定を、ある日突然「コンピューターアルゴリズムで鑑定始めました!」って、世間から受け入れてもらえましたか?
(阿)
例えば船会社が付き合いの深いブローカーに船価鑑定をお願いしたりしても、でてくる鑑定価格が船会社の意向を反映されて本来の価格より高かったりと、恣意的になりがちで
閉鎖的だったので、私たちのように「アルゴリズムで算出したので、船会社の意向は一切反映しない船価鑑定」がすんなり受け入れられたわけではないです。
でも、特に銀行さんを中心にセカンドオピニオンとして使っていただき、徐々に広まっていった感じです。今では世界中650社がVesselsValueの船価鑑定を使っています。実は日本は大きなマーケットで、日本だけでも120社ほどに使っていただいています。
(昼)
アルゴリズムで算出するにはビッグデータが前提ですよね?売買事例の少ない船(ビッグデータがない)だったり、リーマンショックのように過去例がないような不況になって売買が成立しない場合では鑑定精度が低くなると思うのですがいかがですか?
(阿)
不思議な事に船の売買事例のビッグデータって、公的に発行されたものはないんですよ。どんな素晴らしいアルゴリズムを作っても、もとのビッグデータが悪いと意味がないですから、質の高いデータを集める事の重要性は高いです。その上で、船の種類によってアルゴリズムを作り替えていて、売買事例の少ない船でも精度の高い鑑定を出せるように工夫しています。また「気配値」というものをアルゴリズムに加えていて、売買が成立しなくても売りたいけど売れなかった事実など個別の取引事例を分析して考慮するような工夫もしています。
(昼)
ちなみに、船価鑑定以外で提供しているサービスはあるのですか?
(阿)
先ほど「どこで建造されたかや、売買の場所など関係なく大体同じような値段になる」と昼田さんが言っていましたが、VesselsValueでは1隻1隻の実際の船のコンディションも加味して価格を出すサービスもしています。これは船の検査をする検船会社大手のIDWALと提携してアルゴリズムを構築しました。過去の船価の動静から中央値の価格を出すサービスもしています。過去の平均値を取ると、どうしてもリーマンショック前後の価格から正確な数字がでないので、VesselsValueでは中央値を使うことでそう言った異常値を排除した船価を出せると思っています。将来の価格予想をする「フォーキャストバリュー」というサービスも展開しています。これは海運や船舶の情報だけでなくもっと広い情報から最大4年先までの価格をアナリストが分析して価格を出すサービスです。
(昼)
1隻1隻のコンディションを加味した現在の価格だけでなく、過去の中央値、将来の予想値まで提供できるとは、すごいですね!
マリタイムバンクもVesselsValueさんの船価鑑定には大変お世話になっています。このインタビューを通じて、投資家のお客様にご案内している船価鑑定額が恣意的なものではない、客観性のある価格であることをご理解していただけたと思います。お客様の今後の投資のより良い判断材料にVesselsValueの船価鑑定価格にもっと注目していただければと思います。
※1:VesselsValue社は2023年5月にVeson Nautical社に買収され、VesselsValueはVeson Nauticalの一ブランドとなっております。本ブログではブランド名であるVesselsValueで統一しております。