海運のナレッジ

石油は形に残らない?【船舶豆知識】

こんにちは、マリタイムバンク ファンド審査部の神保です。

長年石油ビジネスに従事してきた私が、今回「石油」という観点で書いていきたいと思います!

船が運んでいるものの代表例として「石油」があります。マリタイムバンクでも油を運ぶタンカーへの融資を行なっており、我々の生活を支える重要な役割を果たしています。

「タンカー7号ファンド」の船

石油を運ぶ船とは?

石油は、『タンカー』と言われる船で運びます。本来タンカーとは液体を輸送する船のことで、船体内に大型のタンクを設置していることからタンカーと呼ばれます。

一般的に石油を運ぶタンカーを「タンカー」と呼ぶことが多く、石油タンカーの中でも

  • 原油タンカー:原油を運ぶ
  • プロダクトタンカー:ガソリン、ナフサ(粗製ガソリン)、灯油、軽油などの石油製品船(プロダクト)を運ぶ

に分かれています。

液化天然ガス(LNG)を輸送する船はLNGタンカー、化学物質を輸送する船はケミカルタンカーなどと呼ばれます。


タンカーのサイズとしては、

  • VLCC(Very Large Crude oil Carrier):20万〜32万重量トン級
  • スエズマックスタンカー: 14万~15万重量トン級 スエズ運河を航行可能な最大船型
  • アフラマックスタンカー:8万~12万重量トン級
  • パナマックスタンカー:6 万~ 7万5千重量トン級 パナマ運河を通航できる最大船型

があります。

VLCCはなんと東京タワーの大きさと同じくらいです。大きいですね〜!

さて、ここからは、「石油」について見ていきましょう。

石油と私たちの生活

日本のエネルギー自給率は僅か 5 %程度と言われ、我が国にとっては必要不可欠な船です。私たちの日々の生活は、石油製品で成り立っていると言っても過言ではありません。

どんなものに利用されているかというと、発電所燃料の原油、暖房燃料の“灯油”、自動車エンジン燃料の“ガソリン”、航空機燃料の“ジェット燃料”、トラック・軽自動車の燃料の“軽油”、ガスコンロの燃料の“LPガス”、道路を舗装するアスファルト等、生活に密着したものばかりで数えだしたらきりがないくらい様々な用途に利用されています。

マリタイムバンクが関与する船舶の燃料(バンカーオイル)も、ほとんどが“重油”を使用して広い海を航海しています。農作物を育てるためのビニールハウスの“ビニール”、食品を保存する“ラップ”、食器やレゴ等のおもちゃに使用されるプラスチック、衣服・生地素材の化学繊維、プラスチック等の石油化学製品は、原油から精製された“ナフサ留分”を原料として石油化学工場にて更に精製・加工されて作られているものです。

石油の作り方

では、次に、それらの製品がどの様に作られるのを簡単にご説明しましょう。

それぞれの製品は地下から掘り出した原油を精製して作られます。

主に中東から日本の石油会社の製油所に運ばれてきた原油は、蒸留装置や分解装置によって、LPガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油、重油、アスファルトなどのさまざまな石油製品に生まれ変わります。高さが約50メートルもある蒸留塔の中に加熱炉で350度に熱した原油が吹き込まれ、沸点の差によって各種石油留分に分けられて同時に生産されます。

石油は形に残らない?

私は、長いこと石油ビジネスに従事して原油や灯油・軽油・ガソリン等の製品の輸入、外国間貿易など、いろいろ経験し多くの感動がありましたが、石油というものは、ほとんどが燃焼してなくなり直接的には形として残らないことに寂しさをもっていました。

原油を精製してできるナフサという留分を原料にしてプラスチック、ビニールなどの石油化学製品に加工すれば形として残りますが、化学プラントで何工程も手を掛けないと製品にはなりませんし、いろいろな国から輸入した石油は、大きなタンクに混合貯蔵され、自分が輸入した原油やナフサであるのか自分の目で確認することはできません。発電燃料としての石油も同様です。

しかし、ある時、道路舗装に使うアスファルトは、砂利等と混ぜ舗装することで“道路”という目で見ることができて、そのまま形に残ることに気が付き、それからは、アスファルト事業に力を注ぎ始めました。その後、ある日本の南の離島のほとんどの道を近隣国から輸入したアスファルトで舗装するというチャンスに恵まれ、自分の手掛けた仕事(アスファルト)を目で見ることができて、皆さんの役にたっていることが確認できることに感激し、子供にも、“お父さんが輸入したアスファルトで作った道路!”と説明できたことに、とても満足感を得ました! 

石油は石炭と並び、CO2等温室効果ガス排出による地球温暖化の原因で肩身が狭くなりつつありますが、引続きニーズが高いエネルギーには変わりありませんので、CO2を燃焼時に排出段階で削減、回収できるハイテク技術が発展、開発されることを期待したいところです。

船舶燃料の脱炭素化を業界として推進しており、LNG、 LPG、アンモニア、バイオ燃料、水素、EV等、様々な燃料の研究・開発が進められていますが、賛否両論ありどの燃料が最適なるのかの結論や、普及には時間を要する見込みです。

アスファルトは、代替となる新しい素材が開発されるとは思えませんので、この先もずっと活躍することと思います。“がんばれ・アスファルト!”

執筆者:ファンド審査部 神保俊二